新指導要領解説からプログラミング教育を読む

先月、文部科学省から新指導要領の解説が公開されました。プログラミング教育の扱いについて、それぞれの研究者の皆さんや学校関係者などが様々な解釈をしています。今回は私の考えを書きたいと思います。

  

まず、新指導要領解説からプログラミング教育に関して抜粋し私見を添えます。


1.プログラミング教育は「情報活用能力」の中に位置付けられている

 「情報活用能力」は「言語能力」の次に書かれた「学習の基盤となる資質・能力」の1つとして示された力です。言語能力が1番目に来るのは、コミュニケーションの基本となる記号として言語があるわけで当然と言えます。2番目に示された「情報活用能力」は「各教科の学びを支える」力と書かれています。ここには情報と情報技術という単語が出てきます。プログラミングはこの情報技術に位置付けられていると読むことができます。

 

2. 「プログラミング的思考」という造語

 この言葉は、文部科学省?が作った造語で、プログラミングを学ぶのか?という批判が出たあとに、急に生み出された単語だと私は認識しています。各教科でその思考を育むと書かれているからには、プログラミングやコンピューティングだからこそ育むことができる内容を考えなければいけないという事です。「料理や図工の工作の手順、音楽の楽譜などで、十分に育めるのでは?」という出て来るであろう批判に理論武装をしなければいけません。


3. 全ての教科や活動で導入できる
 指導要領では、算数、理科、総合的な学習の時間で活動例が示されていますが、指導要領解説では、「例示以外の教科や内容でも学習活動として実施可能」と明記されている。教科書会社さんが大変なことになっているということです。

 

4. 民間(総務省・経済産業省)との協働

 社会に開かれた教育課程というコンセプトがあり、文部科学省と総務省と経済産業省との「未来の学びコンソーシアム」も立ち上がりました。学校の先生を助けてくれるプロとどのような協力体制を作っていくのか?は今までの学校教育にはない取り組みなのでコンソーシアムのお手並み拝見です。

 

↓未来の学びコンソーシアム

https://miraino-manabi.jp/

 

 

 

次に、実際に学校教育現場でプログラミング教育をどう扱うか?についての現在の私の考えを書きます。

 

①各教科の観点と、プログラミング教育の観点を分ける

 

 これは、単純な話で、各教科で求められる資質・能力が現在各方面で詰められています。ここにプログラミングの活動を当てはめたとしても、新指導要領の観点が出され日が浅い段階でプログラミングを活用した活動の検証は不可能です。おそらく教科書会社が強引にプログラミングを扱う内容を入れてくると思いますが、各教科が定めた規準とプログラミングの規準を混ぜてしまうのは、授業検討時にも混乱を招き、視点を失うことになると考えています。ですので、各教科の観点とは別にプログラミングの観点を設けるべきです。

 

 

②情報活用能力の情報技能としてのプログラミング教育の観点「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を設定する。


 「プログラミングで学ぶ」というバズワードも、「プログラミング的思考」と同時期に出てきた単語です。噛み砕けば、思考力・判断力が大事と述べているのですが、そもそも「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」は相互に行き来するなかで、高め合うものだと書かれています。また、「知識・技能」をどう使うか?が「思考力・判断力・表現力」だと最初に述べられている部分も「プログラミングで学ぶ」の論を揺るがしている部分です。(最近はこの言葉もあまり聞かなくはなってきていると感じています。)
 プログラミング教育は、元々はイギリスや北欧の国で先行実施されている「プログラミング」「コンピューティング」などの「プログラミングを学ぶ」教科が元になって産業競争力会議から提言されて導入に至りました。各教科からの反発もあり、その扱いがあいまいになっている状況があるのが実情です。そこで、今回の指導要領解説に沿ってプログラミングの観点を設定してみます。

 

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情報活用能力

 情報技術

 ●プログラミング:各教科の中で学校の環境や児童生徒の実態に応じて効果的に導入すること

(知識・技能)

 コンピュータやプログラミングの基本的な知識、コマンドの入力・実行ができること。

(思考力・判断力・表現力)

 プログラミングが活用されている事を想像できること。プログラミングを使って課題解決や表現ができること。入出力のモデル化。

 

 

これらが相互に行き交う主体的な活動の元で、他教科の内容の理解に活かされたならば「深い学び」となる。

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→思考力・判断力・表現力の詳細を見れば、計算機的思考や、実験や計測、表現のツールとしてプログラミングが各教科で活用できる可能性が十分にあることがわかると思います。


③カリキュラムの大域を設定し実践し検証する

 

前提

・(知識・技能)が先だと、詰め込み・プログラミングを学ぶのか?という批判に耐える連関を示す。
・(知識・技能)と(思考力・判断力・表現力)の相互関係を示す。


大域の提案

 

A アンプラグドなどを活用して、身の回りの生活を豊かにする一助となっているコンピュータに着目(思考力・判断力)
B コンピュータの基本的な知識(知識)
C コマンドの入力・実行(技能)
D プログラミング(知識・技能)
E 課題解決や表現(思考力・判断力・表現力)
Z 他教科で活用(深い学び)

 

上記項目の相互関係は

A⇄B→C→D=E⇄Z

 

こんな感じでしょうか。特にEとZの関係で「深い学び」を目指します。

何より、授業で確かめること!!に尽きますね。


とりあえず、今回の解説に関する私見はここまでとします。

 

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慶應大学で行われるPCカンファレンスで今年度のプログラミング教育の研究成果を発表してきます。
本投稿記事の内容について、みなさまからも色々な意見を頂ければと思います。

 

来週中には堀田先生の本も届くので、じっくり読みたいと考えています。